Edge 終了に寄せて

初報を聞いたとき、描画系だけ blink に入れ替えて処理系は V8 使わず ChakraCore などに入れ替えるのかな、と思っていたが、どうも V8、というか chromium 一式を使うらしい。

正直に言って、Edge が死ぬことに、そこまで強く思うところはない。Edge は内部的に自身のベンダープレフィックスwebkit と名乗るぐらい (標準ではなく) webkit との互換性の意識が高いので、お前自分のことを webkit だと思ってるもんな、みたいな気持ちがあった。

webkit みたいなブラウザが消えて、webkit 後継のブラウザをベースに作り直される。開発者として追うべきは、個別の実装ではなく依然として標準仕様であって、それだけの話。

リリースサイクル

僕が思うに、 MS の抱えていた真の問題は、Windows に紐付けられたリリースサイクルとサポートにあって、Windows Update によって環境を破壊されるんじゃないか、というユーザーの不信を生んでしまったことにある。とくにタブブラウザ化した IE7 の不出来は時代を大きく変えた潮目の一つだと思っていて、自動更新をオフにすることが情報強者だ、といった風潮を作ってしまった。

現状、Web の進化のスピードは、IE のサポートが順次切れるスピードで律速となっている。EdgeHTML から Chromium に移ることで、すべての現行ブラウザが事実上ローリングアップデートを採用することになるだろう。その点は歓迎できる。

Chromium の成功した理由の一つは、バックグラウンドの自動アップデートと、それを気づかせない後方互換性の担保と、それが可能な品質にある。なんか最近は急に UI がまるっこくなったりしたが、その程度だ。

仕様策定について

実装の多様性が失われることで仕様に与える影響については他の人が言ってる通り、Google の発言力が強くなりすぎることを懸念する。あまりに UI というものを規定しすぎる WebComponents の初期仕様や、ブラウザに Dart を採用する Dartium は採用されなかったが、今後誰が止められるだろうか。とりあえず今は Mozilla なのだろうが…

これは、Chrome が標準に準拠するか否かではなく、Chromeが標準を私物化しはしないか、という懸念。

今後は Desktop/AndroidChrome と、iOSSafari という対立に収斂されると思われるが、iOSChrome を受け入れるか、Safari が Web の仕様から乖離したときが真に Web というものが試されるときだと思う。

本音を言うと、一開発者としては、優秀なエンジンの寡占こそが、短期的には一番「楽」な状況ではあるが、これが IE の二の舞にならないかというと、その自信は全くない。Chromeで動けばよいみたいなトレンドが生まれてしまうのは、誰がどんな高尚なことを言おうが、状況が生む必然だと思う。水は低きに流れる。